トーハクの思い出

トーハクの思い出

 私は大学在学中の4年間、東京に住んでいました。

東京とは言っても23区外だったため、のどかでほどほどに住みやすい町で、平和な毎日を送ることができました。今でも第二の故郷として、たまには遊びに行きたいなあと思っています。

 東京は交通網が発達しているため、少し足を延ばすとどこにでも行けました。大学の休講日などにちょくちょくお出かけをしていた私の、お気に入りの場所の1つが東京国立博物館、通称”トーハク”です。

 皆さんご存じかと思いますが、トーハクは上野にある国立の博物館です。上野駅から徒歩10分ほど、上野恩賜公園を抜けた先にあります。博物館に向かう道なりにはきれいな銀杏並木があり、秋に訪れると黄色いじゅうたんのようでとても綺麗でした。

 トーハクは私にとって、思い出がたくさんある場所です。私が仏像を好きになったきっかけもトーハクの特別展示でした。

 確か、大学の課題で博物館を訪れレポートを提出する、というようなものだったと思うのですが、ちょうどその時期にトーハクで開催していた特別展が「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」でした。今考えると、この特別展に行くことになったのも、仏像の面白さに一気に引き込まれたのも、何かのご縁だったのではないかと思います。

 東寺の特別展は密教の教えをわかりやすく解説しており、仏教の世界とは奥が深く面白いものなのだなと展示を見進めるうちに引き込まれていきました。そこで私は運命的な出会いを果たしました。特別展の終盤の方で、仏像界でも屈指の人気を誇る、帝釈天騎象像を目にしたのです。

 そのとき私は「目を奪われる、その場から動けなくなる」というものを初めて体験しました。それほどに帝釈天像は神秘的で、穏やかな表情ながらも圧倒的な神格を感じさせてくれたのです。(※↓特別展では帝釈天像の写真撮影が許可されていました📸)

 これをきっかけに私は仏像の世界に見事にはまり、トーハクは私にとって思い入れの強い場所となりました。

 トーハクでの思い出はまだまだありますが、長くなりそうなのでまたほかの機会に書きたいと思います。今は京都に住んでいるので気軽に行ける距離ではなくなってしまいましたが、興味のある展示があるときは、また東京に赴きたいです。